Published On: 2025年5月13日Categories: 侵害予防調査・無効資料調査・鑑定By

製品の製造や販売を行う中で、他社から「特許侵害警告」が届く場合があります。

では、特許侵害警告が届いたら、どのように対応すればよいのでしょうか?また、特許侵害警告を受けるなどのトラブルを生じさせないため、どのような対策を講じれば良いのでしょうか?

今回は、特許侵害警告の概要や特許侵害警告が届いた場合の対応、特許侵害警告が届くなどのトラブルを避ける対策などについて、弁理士がくわしく解説します。

なお、当事務所「中辻特許事務所」は特許出願に強みを有しており、特許侵害警告が届いた場合の対応についてもご相談いただけます。特許侵害警告が届いてお困りの際は、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。

特許侵害警告とは

特許侵害警告とは、特許権を侵害されていると考える権利者が、特許権侵害をしている可能性が高いと考えている相手に送付する文書です。

権利者として特許権侵害の可能性が高いと考えている旨のほか、直ちに実施を辞めるよう求める内容となっていることが多いでしょう。つまり、自社に特許侵害警告が届いたということは、特許権の権利者に侵害行為を疑われているということです。

特許侵害警告は、原則として内容証明郵便で送付されます。内容証明郵便とは、いつ、いかなる内容の文書が誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明する制度です。

なお、内容証明郵便自体は裁判所などが作成に関与するものではなく、極端なことをいえば、まったく出鱈目な内容であっても送付できます。しかし、でたらめな特許侵害警告を内容証明郵便で送りつけてしまうと、受け取った相手から送付者に対して法的措置がなされる可能性が高いため、ある程度の根拠をもって送っている可能性が高いでしょう。

そのため、万が一特許侵害警告が届いたら無視することは避け、早期に適切な対応をとることをおすすめします。特許侵害警告が届いてお困りの際は、中辻特許事務所までご相談ください。

特許侵害警告を受けた場合の初期対応

特許侵害警告を受け取ったら、まずはどのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、特許侵害警告が届いた場合の初期対応について解説します。

  • 弁理士へ相談する
  • 正式な権利者からの警告であることを確認する
  • 侵害の有無を検討する

弁理士へ相談する

特許侵害警告が届いたら、まずは弁理士へ相談しましょう。弁理士は、特許権など知的財産保護に関する専門家です。

特許侵害警告への対応にあたっては弁護士が対応すべき部分もある一方で、侵害の有無の確認などについては弁理士の方が適任といえます。また、多くの弁理士は知財に強い弁護士とのネットワークを有しているため、まずは窓口として弁理士へ相談するとスムーズです。この際、提携する弁護士と連携して対応した実績のある弁理士に依頼すると効率的です。

特許侵害警告を受け取ってお困りの際は、中辻特許事務所へご相談ください。警告の正当性の確認やその後の無効資料調査などについて、中辻特許事務所がお役に立てます。弁護士が所内におりますし、提携する弁護士との対応実績もございます。

正式な権利者からの警告であることを確認する

弁理士へサポートを依頼したら、送付者が正当な権利者であるか否かを確認します。相手が正当な特許権者でないのであれば、特許侵害警告に対応する必要はないためです。

侵害の有無を検討する

特許侵害警告の送付者が少なくとも正当な特許権者であることがわかったら、特許権侵害の有無を精査します。

たとえ特許権侵害であるように見えたとしても、権利者が有する特許権の範囲と問題とされている実施の範囲がズレており、侵害行為にはあたらないケースも少なくないためです。

侵害の有無の検討には特許権に関する的確な知識が必要であり、弁理士がお役に立てます。お困りの際は、中辻特許事務所までご相談ください。

特許侵害警告が正当であると判断した場合の対応

続いて、特許侵害警告を受けて侵害の有無を検討した結果、実際に特許権侵害がある可能性が高いと判断した場合の対応について順を追って解説します。

  • 直ちに実施を中断する
  • 正当に実施する方法を検討する
  • その権利を回避する方法を検討する
  • 相手方からライセンスや譲渡を受ける交渉をする
  • 相手の特許権の無効化を検討する

直ちに実施を中断する

特許侵害警告が正当である可能性が高い場合は、直ちに実施を中断します。直ちに中断すべき理由は、後ほど改めて解説します。

正当に実施する方法を検討する

実施を中断したら、今後その特許権を正当に実施する方法を検討します。正当に実施する主な方法としては、主に次の3つのパターンが挙げられます。

  • その権利を回避する方法を検討する
  • 相手方からライセンスや譲渡を受ける交渉をする
  • 相手の特許権の無効化を検討する

その権利を回避する方法を検討する

1つ目は、その権利を回避することです。

問題となっている特許発明が自社製品の根幹部分ではない場合、その特許発明を実施しない形で製品が製造できないか否かを検討します。また、その製品の売上が芳しくないなどその製品から手を引いても自社にとってさほど損失とならない場合には、その製品自体から撤退することも選択肢となるでしょう。

相手方からライセンスや譲渡を受ける交渉をする

2つ目は、相手方から特許権の実施許諾(ライセンス)や、特許権の譲渡を受けることです。

その特許発明の実施を継続したい場合、権利者から正式に許諾を受けて実施する方法を検討します。具体的には、ライセンス料を支払うことで実施の許諾を受けることや、権利者にまとまった対価を支払って特許権の譲渡を受けることです。

ただし、これらを行うには、相当な対価の支払いが必要です。また、この方法を実現するには権利者の承諾が必要であり、権利者との交渉をまとめなければなりません。

相手の特許権の無効化を検討する

3つ目は、相手の有する特許権を無効化することです。

特許権は絶対的なものではなく、無効化できる可能性もあります。なぜなら、本来であれば要件を満たさず特許を受けられなかったはずであるにもかかわらず、特許を受けているケースが少なからず存在するためです。

前提として、特許を受けるには「新規性要件」などさまざまな要件を満たさなければなりません。新規性要件とは、出願時点でその発明が公知となっていないことを求める要件です。

たとえば、出願前に論文で公表された発明や、出願前に業界誌やインターネットなどで公表された発明、出願前に一般発売された製品について実施された発明などは新規性要件を満たさず、拒絶査定の対象となります。

とはいえ、特許庁での審査過程において審査員がすべての情報を調べることは現実的ではないでしょう。その結果、実際には新規性要件を満たしていないにもかかわらず、特許査定がなされているケースが散見されます。

このような場合には、相手の有する特許権が出願前に公知となっていた旨の証拠を見つけ、これをもって特許無効審判を申し立てることで、問題となっている特許権を無効化できる可能性があります。

相手の権利を無効化できれば障害となる特許権がなくなるため、相手方からライセンスや譲渡を受けることなく、自社が適法に製造・販売を実施することが可能となります。

特許侵害警告が不当であると判断した場合の対応

特許侵害警告の内容を弁理士とともに精査した結果、侵害事実がないと判断できる場合もあります。ここでは、この場合における対応について解説します。

  • 侵害事実がない旨を回答する
  • 相手方の訴訟提起に備えて証拠を準備する
  • 不正競争防止法違反などの主張を検討する

侵害事実がない旨を回答する

侵害事実がないと判断した場合には、その旨を記載した回答書を作成し、相手方に送付します。回答書は、弁理士や弁理士が作成することが多いでしょう。

相手方の訴訟提起に備えて証拠を準備する

自社としては侵害行為がないと判断した一方で、相手方がなお侵害行為があると判断した場合には、訴訟が提起される可能性もあります。

そのため、相手方による訴訟の提起に備え、侵害行為がないと主張するための根拠資料などの準備を進めます。

不正競争防止法違反などの主張を検討する

特許侵害警告が届いた場合、結果的に侵害行為がないと判断できた場合であっても、自社にとって損害が生じるケースは少なくありません。一時的に製造ラインや販売を止めることで、得られたはずの利益を得る機会を逸した場合のほか、特許侵害警告が送られた時点でトラブルに巻き込まれることを回避したい取引先が離反した場合などです。

特許侵害がないにもかかわらず特許侵害警告が送付されて自社に損害が生じた場合、不正競争防止法に違反するとして、相手方に損害賠償請求ができる可能性があります。理由のない特許侵害警告により損害が生じた場合には、弁理士や弁護士へ相談したうえで相手方に損害賠償請求をすることも検討するとよいでしょう。

特許侵害警告を受けた際に避けるべき対応

特許侵害警告を受け取った場合には、誤った対応をしないよう注意しなければなりません。ここでは、特許侵害警告を受けた場合に避けるべき対応を2つ解説します。

  • 警告を無視して実施を継続する
  • 相手方の主張をよく検討せずにそのまま受け入れる

警告を無視して実施を継続する

避けるべき対応の1つ目は、特許侵害警告を無視して実施を継続することです。この対応を避けるべき理由は、刑事罰の対象となる可能性があるためです。

特許権侵害をすると、侵害行為が故意であった(相手の権利の存在を知っていた)か否かに関わらず、差止請求や損害賠償請求などの対象となります。一方で、刑事罰の対象となるのは、特許権侵害を故意に行った場合のみです。

元々は本当に相手方の特許権の存在を知らなかったのだとしても、特許侵害警告を受け取ってもなお侵害行為を継続した場合には故意があると判断され、刑事罰の対象となる可能性が高くなります。なぜなら、遅くとも特許侵害警告を受け取った時点以降には、侵害の可能性を認識していた(つまり、故意であった)と考えられるためです。

特許権侵害の法定刑は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科です(特許法196条)。加えて、法人の業務の一貫で侵害行為をした場合には、法人も3億円以下の罰金刑の対象となります(同201条1項)。

まったく根拠がない状態で特許侵害警告が送られるケースは非常に稀であるため、特許侵害警告を無視することは避けるべきでしょう。受け取った特許侵害警告の正当性に疑問がある場合であっても自己判断で無視をすることは避け、できるだけ早期に弁理士へご相談ください。

相手方の主張をよく検討せずにそのまま受け入れる

避けるべき対応の2つ目は、相手方の主張を検討することなく、そのまま受け入れることです。特許侵害警告が届いたからといって、自社が特許権侵害をしていると決まったわけではありません。

先ほど解説したように、内容証明郵便の内容が正しいとの保証はなく、実際には侵害にあたらない可能性もあります。また、侵害に当たる場合であっても、相手方が提示している損害賠償額などが適正であるとは限りません。

そのため、特許侵害警告の内容をそのまま受け入れるのではなく、まずは弁理士や弁護士などの専門家へ相談すべきでしょう。専門家へ相談することで、そのケースにおける適切な対応が明確となります。

特許侵害警告が届いてお困りの際は、中辻特許事務所へご相談ください。

特許侵害警告などのトラブルを生じさせない対策

特許侵害警告が届くなど、特許権にまつわるトラブルを予防するにはどのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、主な対策を3つ解説します。

  • 侵害防止調査を徹底する
  • 発明について積極的に特許を出願する
  • 日ごろから相談できる弁理士を見つけておく

侵害防止調査を徹底する

1つ目は、侵害防止調査を徹底することです。

侵害防止調査とは、自社の発明品を製造したり販売したりする前に、その製品が他社の特許権を侵害していないか否かを確認する調査です。侵害防止調査を徹底することで、知らずに他社の特許権を侵害する事態を抑止できます。

発明について積極的に特許を出願する

2つ目は、発明については積極的に特許を出願することです。

特許は、先願性(「早い者勝ち」の制度)を採っています。つまり、自社が自力で行った発明であっても、同時期に研究を行っていた他社に先に出願されてしまうと、自社は権利を獲得することができません。

他社が特許権を獲得した発明を自社が実施するには、権利者である他社の許諾やライセンス料の支払いなどが必要です。無断で実施すれば、特許侵害警告が届くことになるでしょう。「模倣ではなく、自社も自力で発明したのだ」と主張したからといって、無断で実施できるようになるわけではありません。

そのため、自社のアイデアや発明については他社に先に出願されてしまう前に、積極的に出願し自社が特許権を獲得しておくべきでしょう。

日ごろから相談できる弁理士を見つけておく

3つ目は、日ごろから相談できる弁理士を見つけておくことです。

弁理士は、特許など知財の出願代理だけを行っているわけではありません。知財の専門家として、「かかりつけ医」のような立ち位置で企業と伴走することも可能です。

知財について悩んだ際や、新たな取り組みをしようとする際に、気軽に相談できる弁理士を見つけておくことで、思いがけず他社の権利を侵害する事態を避けやすくなります。また、タイミングよく出願をすることが可能となり、自社の発明を的確に保護しやすくなるでしょう。

「かかりつけ」とする弁理士をお探しの際には、中辻特許事務所までご相談ください。技術理解力や思考力、論理力を駆使して、クライアント様の知的財産獲得をサポートします。

特許侵害警告を受けないための体制整備は中辻特許事務所へお任せください

特許侵害警告を避けるため、知財にまつわる自社の体制を整備したいとお考えの際は、中辻特許事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を紹介します。

  • 戦略的思考に強い
  • 難解な案件にも対応できる
  • ご依頼者様の満足度が高い
  • 海外への出願にも対応できる

戦略的思考に強い

中辻特許事務所の代表である中辻は、陸自幹部技術高級課程や陸自装備開発を経て弁理士となった異色の経歴を有しています。この経歴で培った戦略的思考を駆使し、ビジネスで勝つための知財戦略の策定支援や、発明の価値を最大化する出願支援などを行っています。

難解な案件にも対応できる

中辻特許事務所は、難解な数学的案件や生成AI、Web3.0などの新しい技術にも対応しています。難解な案件も深く掘り下げ、クライアント様の的確な知財獲得や知財の保護を目指します。

ご依頼者様の満足度が高い

中辻特許事務所は、ご依頼者様からの高い満足度を誇っています。これは、新たな視点と技術理解力によりクライアント様のアイデア等を最大限に引き出すために尽力している結果によるものと自負しています。

海外への出願にも対応できる

中辻特許事務所は、海外の出願にも対応しています。グローバル化が進行している昨今、海外進出を予定している企業様も少なくないでしょう。

当事務所は海外展開を見据えた出願にも対応しているため、安心してお任せいただけます。

まとめ

特許侵害警告の概要や特許侵害警告が届いた場合の対応などについて解説しました。

特許侵害警告とは、特許権侵害が疑わしい場合に権利者側から送られる書面です。特許侵害警告が届いたら、早期に弁理士へご相談ください。弁理士とともに実際に侵害行為があるか否かを判断し、その判断結果に応じて具体的な対応を検討すると良いでしょう。

中辻特許事務所は特許をはじめとした知財のプロフェッショナルであり、クライアント様の権利保護をサポートします。特許侵害警告が届いてお困りの際や、自社の知財について相談できる弁理士をお探しの際などには、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。