Published On: 2025年5月13日Categories: 特許権・実用新案権の取得By

グローバル化が進む昨今、海外展開を予定する企業様も少なくありません。当事務所「中辻特許事務所」にも、海外展開を希望するクライアント様からのご相談が多く寄せられています。

では、日本で取得した特許は海外でも効力があるのでしょうか?また、海外でも効力を有する特許を取得するには、どのような方法を採ればよいのでしょうか?今回は、海外での特許の効力や海外で発明の保護を受ける方法などについて、弁理士が詳しく解説します。

なお、中辻特許事務所では海外展開時の知財にまつわるご相談をお受けしているほか、海外の特許出願のサポートも行っています。特許の海外での効力を知りたい際や、海外で発明の保護を受けたい際などには、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。

日本の特許は海外では効力がない

日本だけで特許権を取得した場合、その特許権は海外では効力を有しません。特許は「属地主義」が採られており、特許を受けた国だけで保護される仕組みであるためです。

日本だけで特許を受けた場合、その発明が保護されるのは日本国内においてのみです。同様に、中国だけで特許を受ければ中国だけで発明が保護され、アメリカだけで特許を受ければアメリカだけで発明が保護されることとなります。

日本だけで特許を出願した場合に生じ得るデメリット

日本でしか特許を受けていない場合、海外展開にあたってさまざまなデメリットが生じます。ここでは、代表的なデメリットを2つ解説します。

  • 海外で侵害品が出回る
  • 海外進出が困難となる

海外で侵害品が出回る

日本でしか特許を受けていない場合、海外で侵害品が出回るおそれがあります。

日本で特許を出願すると、出願から1年6か月後に出願内容が公開されます(特許法64条)。この情報はインターネット(特許情報プラットフォーム)上で閲覧できるため、海外から参照することも可能です。そのため、これを参照して実施した侵害品が出回るおそれがあるでしょう。

そうであるにも関わらず、原則として、海外での侵害行為に対して差止請求や損害賠償請求などの法的措置をとることはできません。なぜなら、先ほど解説したように、日本の特許権の効力は海外には及ばないためです。

海外進出が困難となる

日本でしか特許を受けていない場合、事実上海外進出が困難となるおそれがあります。

日本だけで特許を出願した場合、これを参照した企業が、同様の発明を海外(ここでは、例として、アメリカ)に出願する可能性があります。

前提として、特許は属地主義であるとはいえ、「新規性要件」などの確認にあたっては全世界分が対象とされます。つまり、日本ですでに自社が出願し公知となっている発明であれば、アメリカでは特許が受けられないということです。

しかし、すべての国における出願状況を把握したうえで審査をすることは現実的ではないため、実際には新規性要件を満たしていないにもかかわらず、アメリカに出願した企業に特許査定がなされてしまう可能性もあるでしょう。

この場合において、自社がアメリカに進出すれば、自社製品が侵害品であるとしてアメリカでの権利者から法的措置をとられてしまうかもしれません。アメリカでなされた特許査定は誤りであるため、アメリカの特許庁にあたる省庁(USPTO)に対して無効審判などを申し立てることで、相手の特許権を無効化できます。

とはいえ、海外に特許の無効を申し入れるには労力や専門家に支払うコストなどもかかるうえ、結果が出るまでには時間も要します。そのため、要するコストや時間などと海外進出によって得られる収益とを天秤にかけ、実際にはその国への進出自体を諦めざるを得ない場合もあるでしょう。

海外で効力のある特許を受ける方法

ここまでで解説したように、海外展開を予定している場合には、日本だけで特許を取得することは避けるべきでしょう。海外でも発明の保護を受けたいのであれば、保護を受けたい国に別途出願をして、その国の特許権を取得しておく必要があります。

たとえば、中国に進出したいのであれば中国へ、アメリカに進出したい場合にはアメリカへ出願をして、それぞれの国で特許を受けるべきということです。

海外への特許出願は日本への出願よりも注意点が多く、専門的な知識も必要です。海外で効力を有する特許権を取得したいとお考えの際は、中辻特許事務所までご相談ください。

海外へ特許出願をする2つの方法

海外への特許出願には、主に次の2つの方法があります。

  1. 直接出願
  2. PCT国際出願

ここでは、それぞれの出願方法の概要を解説します。

外国への直接出願

直接出願とは、特許を受けたいそれぞれの国に対し、個別に出願をする方法です。直接出願における出願手続きは、その国の様式で、その国の言語で行います。

たとえば、中国で特許を受けたいのであれば中国の様式に中国語で必要事項を記載して出願し、アメリカで特許を受けたいのであればアメリカの様式に英語で必要事項を記載して出願するということです。

なお、先ほども少し触れたように、特許を受けるには次の要件などを満たさなければなりません。

  1. 新規性要件:出願前に公知となっていないこと
  2. 進歩性要件:出願前に公知となっていた情報に基づいて、その技術分野について通常の知見を有する人が容易に発明できたものではないこと

この新規性要件や進歩性要件の判断は、国内のみについて判断されるのではなく、全世界について判断されます。

これを厳格に適用すれば、日本で先に出願するなどして公知となった発明についてはその後他の国で特許を受けることはできないこととなり、すべての国に同時に出願するしか海外で特許を受ける方法はないこととなってしまうでしょう。

そこで設けられているのが、「パリ優先権」です。パリ優先権とは、パリ条約の同盟国に出願する場合、新規性要件と進歩性要件の判断にあたって、後の出願を最初の出願と同日に行ったものとみなされる制度です。

つまり、日本国内への出願を2025年4月1日に行い、アメリカへの出願を実際には2026年3月1日に行ったとしても、アメリカへの出願を2025年4月1日に行ったものとして新規性要件や進歩性要件が審査されるということです。

優先権の主張ができるのは最初の出願から12か月以内であるため、海外での特許取得を目指す際にはこの期限を意識しておくとよいでしょう。

PCT国際出願

PCT国際出願とは、海外への特許出願を日本の特許庁にまとめて行う制度です。

国際的に統一された様式による出願書類を1通のみ作成し、これを日本の特許庁に提出することで、PCT加盟国であるすべての国に対して同時に出願したのと同じ効果が得られます。また、出願様式も各国の言語で行うのではなく、日本語または英語で行うことが可能です。

ただし、日本の特許庁にまとめて行うことができるのは出願のステップまでであり、その後各国において審査を開始させるには、各国への国内移行手続きが必要となります。中国で特許を受けたいのであれば中国について、アメリカで特許を受けたいのであればアメリカで国内移行手続きをとるということです。

国内移行にあたっては翻訳文の提出などが必要となるほか、現地代理人の選任が必須となる国もあります。国内移行後は、各国の特許庁がその国の法律に従って特許査定をするか否かの審査を行います。

海外への出願でPCT国際出願を活用する主なメリット

各国への直接出願と比較したPCT国際出願のメリットを2つ解説します。

  • 日本語または英語での出願が可能である
  • 優先日から30か月の猶予期間がある

ただし、海外への特許出願にあたって直接出願を選択すべきかPCT特許出願をすべきであるかは、状況によって異なります。実際にいずれの手続きを選択するかは、海外への出願にくわしい弁理士へ相談したうえで決断するとよいでしょう。

海外で効力を有する特許権を取得したいとお考えの際は、中辻特許事務所までご相談ください。状況に応じて、クライアント様の発明を保護する最良の方法をご提案します。

日本語または英語での出願が可能である

PCT国際出願の1つ目のメリットは、出願手続きのハードルが直接出願と比較して低いことです。

先ほど解説したように、PCT国際出願の出願先は日本の特許庁であることに加え、日本語(または英語)で出願できます。また、出願時に提出すべき書類も1通だけで構いません。

ただし、その後実体審査に移行する際は、別途手続きや翻訳が必要となります。特許取得までのすべてが日本の特許庁だけで完結するわけではないため、誤解のないようご注意ください。

優先日から30か月の猶予期間がある

PCT国際出願の2つ目のメリットは、優先日から30か月の猶予期間があることです。

つまり、最終的にどの国で製品展開をするかが決まっていなくても、まずはPCT国際出願だけを行ったうえで、国内移行手続きをとる国を30か月かけて熟考できるということです。30か月という長い期間があれば、各国における技術トレンドやその発明の需要などの状況を見つつ、どの国に国内移行をするか慎重に見定めることができるでしょう。

また、出願自体はPCT国際出願であらかじめ行っているため、出願日はすでに確保できています。そのため、PCT国際出願をしてから国内移行をした日までの期間が30か月近く開いたからといって、これにより新規性要件や進歩性要件を満たさなくなることはありません。

海外で効力のある特許にまつわる注意点

海外で効力のある特許を取得したい場合、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、海外への出願に関する主な注意点を2つ解説します。

  • 「全世界特許」のようなものはない
  • 日本での出願後、海外への出願には期限がある

なお、自社だけで海外への出願を的確に行うことは容易ではありません。的確な海外出願をご希望の際は、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。

「全世界特許」のようなものはない

誤解も少なくないものの、「全世界特許」のようなものは存在しません。つまり、「ある1つの手続きだけを行うことで、全世界で効力を有する特許をとる」ことはできないということです。

PCT国際出願では出願だけは1つの手続きで行えるものの、まとめて行えるのはあくまでも「入口」だけに過ぎません。各国で実体審査を受けるための国内移行手続きは国ごとに行う必要があるほか、特許を受けられるか否かの審査も国ごとになされます。

また、審査基準も国ごとに多少異なることから、同じ発明について「中国では特許を受けられたものの、アメリカでは特許を受けられなかった」など、国によって異なる結果が生じる可能性もあります。

日本での出願後、海外への出願には期限がある

海外への出願は、いつでもできるわけではありません。

パリ優先権が主張できるのは、日本国内での出願から12か月以内です。これを過ぎると海外への出願日が日本への出願日に遡及することはなくなり、実際の出願日時点で新規性要件や進歩性要件が審査されることとなります。

そのため、すでに日本国内でその発明を組み込んだ製品を一般販売している場合には新規性要件などを満たせず、海外で特許を受けられなくなります。また、一般発売などをしていなくても日本への出願から1年6か月後には出願内容が公開されるため、海外での特許獲得は困難となるでしょう。

制度を知らず後悔する事態を避けるため、海外進出の可能性が少しでもある場合は、日本国内への出願段階から海外への出願にくわしい弁理士へ相談しておくことをおすすめします。

中辻特許事務所は、海外展開に伴う知財保護のサポート実績を豊富に有しています。海外展開をご検討の際は、中辻特許事務所まで早い段階からご相談ください。

海外で効力を有する特許出願をしたい場合は中辻特許事務所へご相談ください

海外で効力を有する特許の取得をご希望の際は、中辻特許事務所へご相談ください。最後に、中辻特許事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • 戦略的思考に強い
  • 海外への出願サポート実績が豊富である
  • 最新技術にも精通している
  • ご依頼者様からの満足度が高い

戦略的思考に強い

中辻特許事務所の代表である中辻は、防衛大学校理工学研究科を修了し、筑波大学の博士課程の研修生や陸自幹部技術高級課程、陸自装備開発を経て弁理士業界に足を踏み入れた異色の経歴を有しています。これによって培われた戦略的思考を駆使し、クライアント様がビジネスで勝つための戦略的な知財獲得を支援しています。

海外への出願サポート実績が豊富である

中辻特許事務所は、海外への特許出願について豊富なサポート実績を有しています。そのため、海外進出が初めてであり、知財保護についての注意点がわからないといった場合であっても、安心してお任せいただけます。

最新技術にも精通している

中辻特許事務所は、生成AIやWeb3.0などの新しい技術にも精通しています。また、難解な数学的案件にも対応しており、アイデアのブラッシュアップ段階からのサポートも可能です。

新たな視点と技術理解力を最大限に発揮し、今後の技術動向にも対応できる的確な権利取得をサポートします。

ご依頼者様からの満足度が高い

中辻特許事務所は、ご依頼者様からの高い満足度を誇っており、Googleマップの口コミにも有り難い評価を投稿いただいています。これは、当事務所が技術理解力や思考力、論理力を駆使してクライアント様の知的財産獲得をサポートしている結果であると自負しています。

海外進出に伴って自社の発明を保護する方策をご検討の際には、中辻特許事務所までまずはお気軽にご相談ください。

まとめ

特許の海外での効力や、海外で効力を有する特許を獲得する方法、海外で特許を取得したい際の注意点などについて解説しました。

特許は属地主義が採られており、日本だけで取得した特許は海外では効力がありません。そのため、日本でしか特許を獲得していない場合、海外で侵害行為がなされても有効な対応がとれない可能性が生じます。そのため、海外展開を予定している場合には、進出を予定する国でも特許を受ける必要があります。

海外に出願する方法には、直接出願とPCT国際出願の選択肢があるため、弁理士へ相談したうえで、状況に合った出願方法を選択するとよいでしょう。日本への出願から時間が経ってしまうと、海外で特許を受けることは困難となるため、海外展開を予定している場合には、日本への出願時点から弁理士に相談しておくことをおすすめします。

中辻特許事務所は、海外への特許出願にまつわるサポート実績を豊富に有しています。海外展開を予定しており、海外でも効力を有する特許権を取得したいとお考えの際は、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。実績豊富な弁理士が、ご相談者様の状況に応じた最良の対応策を提案します。