Published On: 2025年4月21日Categories: コンサルティングBy
知財リスクマネジメントとは?主な知財リスクとマネジメント方法を弁理士が解説

企業は、知財にまつわるリスクを正しくマネジメントしなければなりません。リスクのコントロールができていなければ、思わぬ損害を被ったり思わぬトラブルに巻き込まれたりする可能性があるためです。

では、知財にまつわるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか?また、知財のリスクをマネジメントする方法としては、どのようなものが挙げられるでしょうか?

今回は、知財リスクの概要やリスクごとの主なマネジメント方法などについて、弁理士がくわしく解説します。

なお、当事務所「中辻特許事務所」は、特許や商標などの出願はもちろん、企業の知財リスクマネジメントについてのアドバイスやサポートも可能です。自社の知財を適切にマネジメントしたいとお考えの際は、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。

知財リスクマネジメントとは

知財リスクマネジメントとは、知財にまつわるリスクを正しく理解し、これをコントロールすることです。リスクをゼロにできれば望ましいとはいえ、すべてのリスクをゼロにすることはできません。

一般的に、リスクマネジメントには次の種類があるとされています。

区分 手段 内容
リスクコントロール 回避 リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。 リターンの放棄を伴う。
損失防止 損失発生を未然に防止するための対策、予防措置を講じて発生頻度を減じる。
損失削減 事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策。
分離・分散 リスクの源泉を一箇所に集中させず、分離・分散させる対策。
リスクファイナンシング 移転 保険、契約等により損失発生時に第三者から損失補てんを受ける方法。
保有 リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する方法。

これは知財に限ったマネジメント手法ではないものの、知財リスクマネジメントを検討する際にも参考となるでしょう。

知財にまつわる主なリスク

知財には、さまざまなリスクが存在します。ここでは、知財にまつわる主なリスクを5つ解説します。

  • 他者の知的財産権を侵害するリスク
  • 知的財産を侵害されるリスク
  • 知的財産権が無効化されるリスク
  • 秘匿リスク
  • 職務発明に関するリスク

他者の知的財産権を侵害するリスク

1つ目は、他者の知的財産権を侵害するリスクです。

特許権や商標権など登録制を採っている知財では、たとえ模倣ではなく偶然の一致であっても法的措置を免れないことに注意しなければなりません。他者の知的財産権を侵害した場合に講じられる可能性のある主な法的措置は、次のとおりです。

法的措置 概要
差止請求 侵害行為の停止や侵害の予防、侵害行為を組成した物の廃棄などを求めるもの
損害賠償請求 侵害行為によって生じた損害を金銭の支払いで償うことを求めるもの
信用回復請求 新聞への謝罪広告の掲載など、侵害行為によって失墜した信用の回復措置を求めるもの

また、侵害警告などを受け取ったにもかかわらず侵害行為を続けた場合には故意と判断され、刑事罰(懲役刑や罰金刑)に処される可能性もあります。

知的財産を侵害されるリスク

2つ目は、自社の知的財産が侵害されるリスクです。

たとえば、苦心して消費者からの支持を獲得した商品に関して模倣品が溢れてしまうと、自社が正当な収益を得る機会が低減してしまいます。また、海外進出をしようとした際に海外ですでに模倣品が流通しており、さらに模倣品の製造者がその国において商標登録を受けている場合などには、その国への進出が事実上不可能となるおそれもあります。

知的財産権が無効化されるリスク

3つ目は、知的財産権が無効化されるリスクです。

知的財産権は、獲得したからといって安泰というわけではありません。出願時に要件を満たしていなかったことが後から発覚した場合、権利が無効化されるおそれがあるためです。

たとえば、特許を受けるための要件の1つに「新規性」があり、その発明が出願時点で公知となっていた場合には特許を受けることができません。しかし、特許庁の審査官がすべての公知情報を確認することは現実的ではなく、実際には出願前に論文が公開されていた発明について特許査定がなされることもあるでしょう。

この場合、開発段階などにおいて自社の特許権が障害となった他社が無効資料調査を行い、実際には出願前に論文が公表されていたことを証明することで、自社の特許権が無効化される可能性があります。

秘匿リスク

4つ目は、秘匿リスクです。これは、特に特許権の場合に問題となります。

特許を出願する場合、出願内容を秘匿することはできなくなります。なぜなら、特許法により、出願から1年6ヶ月後には出願内容を公開することが明記されているためです(特許法64条)。

また、この公開情報はインターネットで閲覧できるため、国内のみならず海外から閲覧され、模倣されるリスクも生じます。

職務発明に関するリスク

5つ目は、職務発明に関するリスクです。

職務発明とは、従業員が職務の一環として行った発明です。これについて、従業員が退職する際などに権利の帰属や対価の支払いについてトラブルとなる可能性があります。

知財リスクマネジメントの流れ

ここまでで解説したように、知財にはさまざまなリスクがあります。ここでは、知財リスクをマネジメントする一般的な流れを解説します。

  • 自社の知財リスクを洗い出す
  • 知財リスクを評価する
  • リスクへ対応する

自社の知財リスクを洗い出す

先ほど解説した知財リスクは一般的なものであり、すべての企業に当てはまるものではありません。そこで、まずは自社にとっての知財リスクを洗い出すことから始めましょう。

知財リスクを評価する

自社の知財リスクを洗い出したら、それぞれのリスクを評価します。

すべての知財リスクをゼロにできればよいものの、これは現実的ではないでしょう。そこで、対策の優先順位や対応の濃淡を決めるために、知財リスクの評価を行います。

リスクへ対応する

知財リスクを評価したら、評価結果を踏まえて具体的な対策を講じます。知財リスクが高いもの(リスクが顕在化した際の影響が甚大となり得るもの)や、リスクの大きさと比較して対応コストが低いものから優先的に対応することが原則です。

具体的なリスクマネジメントの方法は、次でくわしく解説します。

知財リスクへのマネジメント方法

知財リスクのマネジメントとして、具体的にどのような対応をすればよいのでしょうか?先ほど紹介したリスクごとに、主なマネジメント方法(対策)を解説します。

  • 他者の知的財産権を侵害するリスクのマネジメント
  • 知的財産を侵害されるリスクへのマネジメント
  • 知的財産権が無効化されるリスクのマネジメント
  • 秘匿リスクのマネジメント
  • 職務発明に関するリスクへのマネジメント

具体的な対応でお困りの際は、中辻特許事務所へご相談ください。中辻特許事務所は企業の知財戦略に強みを有しており、知財リスクマネジメントのサポートやアドバイスが可能です。

他者の知的財産権を侵害するリスクのマネジメント

他者の知的財産権を侵害するリスクのマネジメント方法としては、事前調査の徹底が有効です。

特許では、新たに開発を進めようとする際や製品化を進めようとする際に侵害予防調査を徹底するとよいでしょう。侵害予防調査とは、すでに他社によって出願されている発明を調査することです。これにより他者の権利を知らずに侵害する事態を避けられるほか、すでに世にある技術を手間をかけて一から開発する事態を避けることも可能となります。

開発は日進月歩で進行することから、開発の開始時点で調査をするのみならず、開発の途上でも新たに出願された情報を確認するとより確実です。また、商標では新たな使用を開始する前に他社がすでに似た商標について登録を受けていないか調べることで、権利侵害を予防できます。

とはいえ、自社だけで的確な調査をすることは容易ではありません。そのため、必要に応じて弁理士のサポートを受けるとよいでしょう。お困りの際は、中辻特許事務所へご相談ください。

知的財産を侵害されるリスクへのマネジメント

知的財産を侵害されるリスクのマネジメント方法としては、大切な知的財産については積極的に出願することが検討できます。積極的に出願をすることで、侵害された際の対応がスムーズとなるほか、侵害の抑止力にもつながります。

また、後手に回って出願をするのではなく、自社が獲得したい知的財産権をあらかじめ定め、これを戦略的に獲得していく「知財戦略」の策定も有効です。中辻特許事務所では具体的な出願のサポートはもちろん、知財戦略の策定についてもサポートしています。

知的財産権が無効化されるリスクのマネジメント

知的財産権が無効化されるリスクのマネジメントとしては、出願時の情報管理や他社の権利を侵害しないことの調査を徹底することです。そもそも無効となる理由がなければ、無効化されるおそれはないためです。

また、出願時に弁理士のサポートを受けて要件面を徹底的に確認したうえで出願することによっても、無効化リスクの低減につながるでしょう。

秘匿リスクのマネジメント

秘匿リスクのマネジメントとしては、出願をすることが自社にとって適切であるか否か、あらかじめ弁理士へ相談して慎重に検討することが有効です。状況ごとに出願することのメリット・デメリットと、出願しない場合のメリット・デメリットを比較することで、適切な判断がしやすくなります。

また、海外への進出を予定している場合は、海外への出願も検討するとよいでしょう。特許や商標では属地主義が採られており、日本国内だけで出願した場合には海外での侵害について対応が困難であるためです。

中国で保護を受けたいのであれば中国に、インドで保護を受けたいのであればインドに出願をして登録を受けることで、登録を受けた国で権利の保護を受けることが可能となります。

中辻特許事務所は、海外への出願にも対応しています。海外での権利保護を受けたい際は、中辻特許事務所までご相談ください。

職務発明に関するリスクへのマネジメント

職務発明に関するリスクマネジメントとしては、就業規則や雇用契約書内に職務発明に関する規定を盛り込むことが検討できます。併せて、退職時にも改めて覚書などを取り交わすとよいでしょう。

知財リスクマネジメントは中辻特許事務所へご相談ください

知財リスクマネジメントでお困りの際は、中辻特許事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。

  • 戦略的思考に強みを有している
  • 複雑な数学的案件などにも対応できる
  • 海外への出願を含めた対応が可能である

戦略的思考に強みを有している

中辻特許事務所の代表である中辻は、陸自幹部技術高級課程や陸自装備開発などを経ている異色の経歴を有しています。ここで培われた戦略的思考を強みとしており、クライアントのビジネスを成功に導く知財戦略の策定支援を得意としています。

自社に合った知財戦略を策定することで、知財リスクを最小限に抑えやすくなるでしょう。

複雑な数学的案件などにも対応できる

中辻特許事務所は特許出願に強く、複雑な数学的案件や生成AI・Web3.0などの最新技術への対応も可能です。アイデアのブラッシュアップ段階からのサポートも可能であり、より価値の高い知財獲得をサポートします。

海外への出願を含めた対応が可能である

中辻特許事務所は海外への出願にも対応しており、海外への出願を含めたサポートが可能です。海外へも出願すべきか否かについてのアドバイスも可能であるため、海外で権利保護を受けたい場合にもお気軽にご相談ください。

まとめ

代表的な知財リスクを紹介するとともに、各リスクについての主なマネジメント方法などを解説しました。

主な知財リスクには、他者の知的財産権を侵害するリスクや知的財産を侵害されるリスク、無効化リスクなどが挙げられます。リスクを理解していないと、不利益を被ったりトラブルに巻き込まれたりする可能性があります。

そのような事態を避けるため、自社にとっての知財リスクを把握したうえで、それぞれのリスクを適切にマネジメントすべきでしょう。

とはいえ、知財リスクの洗い出しやマネジメントを自社だけで検討することは容易ではありません。より有効な対策を講じるため、知財リスクマネジメントでお困りの際は弁理士へ相談することをおすすめします。

中辻特許事務所は戦略的思考に強みを有しており、出願のサポートはもちろん、知財リスクマネジメントにまつわるご相談やサポートにも対応しています。自社の知財リスクを把握し適切にマネジメントしたいとお考えの際は、中辻特許事務所までお気軽にご相談ください。